この世界最大規模の宗教であるスクラーヴェ教。その始まりは荒野であったと記録されている。その場所に降り立ち瞬く間に緑豊かな森林へと変えた一柱の神こそがスクラーヴェ神であった。「貴方様のお名前をお聞かせ願えないでしょうか」と現場に偶然立ち会った青年がお尋ねしたところ神は「僕?僕は……Sklave。僕は神スクラーヴェ。しがない神界の██だよ。」とお答えくださったと。
一部の者にのみ伝わる口伝によると神は死んだ目で「はぁ……休み欲しいなぁ。あんのクソ母神どもトンズラしやがって!次見かけたら殴る!絶対殴る。十中八九勝てないけど殴る。消滅させられるかもしれないけど一発殴らないと気が済まねぇ!」とも仰られていたとか。まぁ、本当に仰られていたかは眉唾ものだが。
そんなスクラーヴェ教の総本山である聖スクヴェニア教国の大聖堂には世界の成り立ちが記されているとされる聖典が保管されている。これはその原典の一部である。
◇◇
██歴 xxxx年僕は母神であるか███の雑用を担当する神として生み出された。無茶ぶりばかり正直こんな仕事やってられるかと投げ出そうと思ったことは数えるのも馬鹿らしくなるほどある。でも、僕が自分の仕事をこなさなければ下の者達に迷惑をかける。僕にも部下はいる。でも彼らに無茶ぶりはしたくない。これは僕のプライドの問題だ。僕が……僕がやるしかない。僕にしかできない。僕以外にやる神がいない。
██歴 xxxx年
母神が世界を創造した。まだ何もない空間だけどこれからどんな世界になるんだろう。愛すべき小さきものたちはどんな道を歩むんだろう。楽しみでしょうがない。いつか彼らと対話できる日がくることを楽しみに今の仕事を頑張ろう。最近他の神がほとんど仕事をしていない気がする。その分の仕事が僕らに回ってくる。僕らのことを奴隷かなにかと勘違いしてるんだろうか。これでは僕らの負担が大きすぎる。僕はともかく部下たちにこれ以上無理をさせる訳には……上には報告をしたけど動いてくれるかは分からない。音沙汰があるまでは僕が肩代わりして頑張ろう。ハハッ……これが異界で言うところの社畜ってやつか。██歴xxxx年
あれから音沙汰は一切ない。もう2万年は待った。しょうがない横壁破りだけど直接言いに行こう。きっと直接話せば分かってくれるはずだ。大丈夫大丈夫きっと全部上手くいく。██歴xxxx年
なんとか約束を取り付けて会いに行ったけど、一枚の紙切れが机に置いてあるだけで誰もいなかった。これでも母神から直接生み出された息子のような存在なのに。残された紙切れによるも母神たちは既にこの世界を発ったそうだ。残されたのは僕と僕の部下たち。それとこんな僕にも良くしてくれてた一部の同僚たち。それでもやるしかない。あと、母神は見つけ次第ぶん殴る。『えっと……とりあえず立ち話もなんだからこっち着いてきて。』 「はーい。」 "てくてくてく……てくてくてく……" いや〜ちゃんと話聞いてもらえそうで良かった良かった。僕とは違うアプローチで研究してるらしいし早く話聞きたいな〜。 "バタンッ" 「ん?え?え?」 僕……追い出された?いやいやいやいや!僕は極めて友好的に話しかけたつもりだよ?僕も一応真面目に研究をしてて先生と同じ探求者のつもりだったのに。そんなぁ!こうなったら成果物を持って釣るしかないか……って魔法鍵かけられてるじゃん!え?そんなに僕嫌われた?ショックだわぁ。 ま、これくらいなら秒で開けられるけどね! "ガチャッ" 「先生!これだけ見てくださいよ!」 『なんで入ってくんだよ鍵かけただろうが!』 「お願いですこれだけ見てください!」 "バンッ" からの魔力圧を"ドンッ" 『……………………』"バタンッ" 「え?もしかして圧かけすぎて倒れちゃった?」 さてと、どうするかなぁ。勝手に論文を見るのはさすがにまずいしなぁ……ぶっちゃけすることがない。いや、ないことはないよ?入学式中だし。先生の復帰を待ちがてら入学式の見学に集中でもするかな。よし、それでいこう! てか長くない?だってもうだいぶ経ってるはずなのにいつまで入学式やってるわけ? 入学式会場の方に意識を戻すとそこには正装をして入学式に乗り込んできた裕福そうな子供がいた。 『ちょっと待ったァァァァァァ!!!この俺の入学を認めないとはどういうことなんだ!』 「いや、結婚式かよ……。」 いや、結婚式でもいないか。あれはフィクション。ドラマだけの話だしな。まぁこの世界自体が大概ファンタジーしてるからしょうがないね……とはならんよ?ならないよ?だから一つだけ!一つだけひツッコミをさせて欲しい!裕福そうな子供に。そう君だ!君に対して言いたいんだよ。 「入学断られたのはそういうとこだぞ!」ってなぁ!
どうも皆さんこんにちはわ。ちょっと前に消し飛んだ名無しの分霊さんです。未だに身体の再形成はしてもらえてないです。そのことは一旦脇に置いておいて、今日はこっちの暮らしを紹介していこうと思います。とは言っても大した内容にはならないと思いますけどね。まぁ、箸休めとでも思ってくださいな。それじゃあさっそく分霊の日常譚、始まり始まり〜!◇◇ 分霊の朝は早い……わけもない。だってそうでしょう?身体ないんだもん。ただ黙々と現世で活動してる分霊から本体へのフィードバックを処理するだけの存在ですわ。並列処理とかはね、構造上向いてないんですよね、並列処理をしようと思うなら本体に準じた思考能力と横の繋がりが必要なんですよ。 ここで分霊って魔法のおさらいと行きましょうか。分霊っていうのはざっくり言うと本体の意識をコピーアンドペーストした上で使役されてる存在なわけです。ここまでは大丈夫です?まぁ厳密には違う訳ですが今はこのくらいの理解でいいと思います。で、問題が魔法的に繋がっているのが分霊それぞれとだけなことなんですよ。 もう少し独立性を持たせて、かつ統率個体を作ればあるいは……ってこれだとダメなのか。となると本体の性格的な側面を分割した上で魔法で機能の拡張をする辺りが解決策になるんでしょうか。どこぞの「ですがなにか?」みたいに問いかけてくる系ラノベの益虫な節足動物みたいなことすればいいんじゃないです?これ以上は触れないですけど…… 本体のコピーとは言ってもこれだけ好きに生きてりゃ性格も違ってくるんです。そうなると趣味嗜好も変化します。 あぁ〜頭に入れること多すぎで草も生えねぇよ!もう勉強とかしたくねぇ〜!誰かください!アニメを!漫画を!ラノベを!ゲームを! しくしく……しくしくしく!ちらっ?しくしくしく……ちらっ? はぁ……チッ
「頼もぉぉぉぉぉぉ!!」『………………………………………………』 あれ〜?聞こえてないのかなぁ。ここにいる先生もだいぶ歳らしいし耳が悪くなったのか?「たぁぁぁのもぉぉぉぉぉぉ!!!」『………………………………………………』 いや、違うな。これはたぶん聞こえた上で無視されてるんだ。そっちがその気ならこっちだってとことことんやってやんよ!"てくてくてく"「すぅぅぅぅぅ……たぁぁぁぁぁのもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」『うるせぇ!!貴様のクソデカボイスのせいで実験に悪影響があったらどうすんだよ!』 んだと?てめぇがさっさと返事しねぇからこちとら大声出すことになってんだよ!この僕の喉が潰れたらどう責任とってくれんだあ゙ぁん?「安心してください!ちゃんと僕と先生以外を結界で隔離しておきました!これならびっくりして飲み物零しそうになっても大丈夫ですね!」『違うそうじゃない……』 違うそうじゃない?わかってやってんだよばーか!「あと一応休憩中っぽかったんで声かけたんですけど、思いっきり無視されたのでちょっとムキになっちゃいました。すいません。」『貴様のような素人の目から見て休憩中でもまだ実験をしているかもしれないというのに軽率だな。』「心拍数や筋肉の収縮などの各種バイタルデータ的にはリラックスしてるみたいだったのでてっきり休憩中かと……邪魔してしまったなら謝ります。すいませんでした。」『なんだコイツ……シンプルに気持ち悪い。』
なんやかんやありまして入学式でございます。はい拍手!もっと面接からの合格通知とか家族の反応とかあるでしょって?そんなの読んでて楽しい?いや、読みたいなら書くけど……うーん、気が向いたら閑話として本編とは別に書くかもしれない。書くとしたら本編進める気力が湧かない時とかかな。|閑話休題《それはさておき》 今日は入学式という僕の人生における節目の日だ。とは言っても僕は今日も寮に引きこもる予定だけどね。入学式なんて立ちっぱなしにされた生徒が立ちくらみでぶっ倒れるくそだるイベントだからね。サボれるならサボるさ。当然でしょ?寮でゴロゴロしながらラジコン操作感覚で画面越しに入学式を見学するって計画……だったんだけどね?「〜であるからして学生諸君にとって学校とはこの社会全体の縮図なのである。貴族と平民の平等を謳っている我が校だが、それは身分を理由に他者の学びを妨げてはいけないという意味である。故に上の身分の者相手への敬意を忘れてはいけない。そしてこれは身分関係ないことであるのだが、ここは学び舎だ。努力を惜しまぬ者への敬意も忘れてはならぬ。諸君!ここは学び続ける者の味方だ!我々教員、そして設備を存分に有効活用したまえ!」 長くて飽きちゃったのよ、僕。だからちょっと学校を見学しつつ端末操作することにした。いわゆる歩きスマホってやつ?でも安心したまえ諸君!それを咎める人などこの世界には存在しない!理由は簡単!ながら操作をするような魔道具がないからだ。それに今は在校生含め全ての生徒が入学式に参加している。あ、もちろん僕は例外ってやつね? この状況ならぶつかる相手などいないってこと寸法よ。いたとしても仕事中で机に向かってるしてる先生くらいだと思うしね。こんなとこブラブラしてる先生はいない。これは別にフラグとかではなく純然たる事実だ。というわけで比較的融通効かせてくれそうで、かつ優秀な教授の所に凸していk……「痛ってぇ!躓いたんだけど最悪。ん?この段差か。これは僕が悪いな。まぁ、歩きながらの操作をやめる気はサラサラないんだけどね。じゃ、気を取り直してしゅっぱーつ!」 みんな「は?」みたいな顔してるけどこれは必然なのだよ。僕がこの学校に何をしに来たか。クソ長い教師の話を聞きに来たか?否!僕は研究をしに来たんだよ?なら研究室に行くってのは必然じゃないか。異論?認めるわけがない
『それじゃあ面接を始め……る前に一つ聞いてもいいか?』"パリパリッポリッポリッ"「はい、なんでしょう。」『それは……なんなんだ?見たところ魔道具の類のようだが……』「これは遠隔操作型長距離通信端末です。名前の通り長距離通信を可能にする魔道具で、"パリパリッポリッポリッ"付いてる足で歩いて移動させることもできます。あくまでメインは遠距離通信用の端末なので細かい動きはできないんですけどね。それに……あんまり機能付けすぎると多方面から目を付けられなので。」『多方面に目を付けられるだなんて大袈裟じゃないか?お前の学力、戦闘力は目を見張るものがある。が、それ以上にこの国には国力を上げるために優秀な研究者たちが研究し続けてきた歴史がある。ただ遠くと話せるだけの端末なら既に開発されている。』「む!僕を馬鹿にしないでください。"パリパリッポリッポリッ"そんな陳腐な物なわけないですよ。これ、映像も写せるんです。こっちからもそっちの様子が見えてます。"パリパリッポリッポリッ"それに隠密機能積んだら立派な諜報活動も可能な魔械兵の完成じゃないですか。」『確かにそれならお前の発明は素晴らしい。研究開発においても第一線で活動している者たちに引けを取らないだろう。だがなんだその姿勢は!寝っ転がって飲み物を飲みながら菓子を摘むだと?そんなの面接云々関係なく人としてどうなんだ?身内との会話ならともかく外部の人間と話すというのにその姿勢はありえない!』 いや、ついポテチを摘む手が止まらなくて〜てへぺろっ☆ な〜んてさすがに言えないしここはいい感じに誤魔化すしかないか。「だから嫌だったんですよ映像写すの。ちょっとムキになって映像投影機能オンにしちゃいましたけど本当は使う予定なかったのに。面接官さんのせいです!」 あ、これダメだ全然誤魔化せてない。やっぱりダメかぁ。自立思考型ゴーレムの試運転は失敗かぁ〜ポンコツ過ぎてこいつ墓穴しか掘らないじゃねぇか!
『それじゃあ面接を始め……る前に一つ聞いてもいいか?』"パリパリッポリッポリッ"「はい、なんでしょう。」『それは……なんなんだ?見たところ魔道具の類のようだが……』「これは遠隔操作型長距離通信端末です。名前の通り長距離通信を可能にする魔道具で、"パリパリッポリッポリッ"付いてる足で歩いて移動させることもできます。あくまでメインは遠距離通信用の端末なので細かい動きはできないんですけどね。それに……あんまり機能付けすぎると多方面から目を付けられなので。」『多方面に目を付けられるだなんて大袈裟じゃないか?お前の学力、戦闘力は目を見張るものがある。が、それ以上にこの国には国力を上げるために優秀な研究者たちが研究し続けてきた歴史がある。ただ遠くと話せるだけの端末なら既に開発されている。』「む!僕を馬鹿にしないでください。"パリパリッポリッポリッ"そんな陳腐な物なわけないですよ。これ、映像も写せるんです。こっちからもそっちの様子が見えてます。"パリパリッポリッポリッ"それに隠密機能積んだら立派な諜報活動も可能な魔械兵の完成じゃないですか。」『確かにそれならお前の発明は素晴らしい。研究開発においても第一線で活動している者たちに引けを取らないだろう。だがなんだその姿勢は!寝っ転がって飲み物を飲みながら菓子を摘むだと?そんなの面接云々関係なく人としてどうなんだ?身内との会話ならともかく外部の人間と話すというのにその姿勢はありえない!』 いや、ついポテチを摘む手が止まらなくて〜てへぺろっ☆ な〜んてさすがに言えないしここはいい感じに誤魔化すしかないか。「だから嫌だったんですよ映像写すの。ちょっとムキになって映像投影機能オンにしちゃいましたけど本当は使う予定なかったのに。面接官さんのせいです!」 あ、これダメだ全然誤魔化せてない。やっぱりダメかぁ。自立思考型ゴーレムの試運転は失敗かぁ〜ポンコツ過ぎてこいつ墓穴しか掘らないじゃねぇか!